ゴルフの上達には、感覚や感性を磨く部分と、データやスタッツで検証する部分があります。昨今では分析としてのスタッツ、またトラックマンをはじめとするデータの活用により、プロや上級者の上達に寄与している面があります。また、トーナメントで公開されているスタッツはゴルフ観戦を楽しむ1つの要素にもなっています。
ゴルフ上達のためのデータ
熱心にゴルフをされている方は、スコアはもちろん、主要なデータを記録していると思います。
特に最近では各種アプリも増えました。
また、画像、動画データという意味では、まずはスマホの普及が非常に大きい。
誰もが簡単に自分のスイングを撮影できるようになりましたし、それを診断するアプリも増えました。
また、個人で、打球に関連する測定器の出現も大きな話題になりましたね。
GARMIN Approach R10などは、まずまず高価ですが、所有している方も、それなりに増えてきた印象があります。
プロであれば、トラックマンを所有するプロゴルファーは圧倒的に増えたと思います。
特にプロレベルであれば、そのデータから、スイングのズレを見つけ出すヒントにもなります。
山下美夢有はプロテスト合格直後にトラックマン購入
2022年、女子ゴルフ年間女王レースを引っ張っている山下美夢有さん。
2019年、彼女が高校3年生のときから、現役高校生がJLPGAプロテストを受験できるように制度が変更されました。
ですから山下さんは、笹生優花、西郷真央の両選手と共に、現役高校生プロテスト合格第1号となりました。
お父さんの教えでゴルフの腕前を上達させてきた山下さん。
小柄でもあり、飛距離のアドバンテージを得るのは難しい。
そんな彼女がこだわったのが精度で、プロテスト合格直後、ツアー参戦前にトラックマンを購入しました。
何せ小型乗用車と同じくらいの値段ですから、簡単に買えるものではありません。
しかし、彼女はツアープロとなる自分への先行投資として購入しました。
2021年にプロ入り初勝利を挙げると、2022年はメジャーも制覇しツアーを代表するプロゴルファーになりました。
山下美夢有のトーナメントスタッツ
では、山下美夢有さんは、ツアープレイヤーの中でも何が優れているのでしょう?
JLPGAにて公開されている主要なスタッツを見てみます。
※2022年11月1日現在。
年間獲得賞金 ¥175,222,666 (1位)
平均ストローク 70.1617 (1位)
年間女王にふさわしくすべてのスタッツは上位です。
パーオン率 73.5364 2位
平均パット数(パーオンホール) 1.7638 7位
平均パット数(1ラウンド当たり) 29.1720 19位
パーセーブ率 89.8447 3位
平均バーディー数 3.7204 2位
ドライビングディスタンス 235.08 55位
フェアウェイキープ率 76.1905 8位
リカバリー率 69.9774 4位
パーブレーク率 20.9080 3位
パー3平均スコア 2.9382 3位
パー4平均スコア 3.9442 1位
パー5平均スコア 4.7405 11位
予選ラウンド平均ストローク 70.2639 2位
決勝ラウンド平均ストローク 70.0000 2位
1stラウンド平均ストローク 69.7960 1位
2ndラウンド平均ストローク 70.6882 2位
3rdラウンド平均ストローク 70.0435 4位
4thラウンド平均ストローク 70.0000 3位
Finalラウンド平均ストローク 70.1250 3位
唯一、平均以下となるのがドライビングディスタンス。
それ以外は、ほぼ3位以内ですので、平均ストローク1位も納得です。
曲がらず、パーオンをし、バーディーを決める。
リカバリー率も高く、グリーンを外してもボギーを打たないことが分かります。
当然のことにように、山下美夢有さん本人も見ていますね。
プロテスト合格直後に購入した、弾道測定器のデータもしっかり活用しています。
スコアを伸ばすには、バーディーチャンスを数多くつくることが急務。スイングスピード、スピン量、入射角などを計測してきた。重視するのは、ボールスピード、クラブスピードから導き出す「ミート率を大切にしている。打ち出し角の高低をみながら、調子を図ります。具体的には、1Wで3-4度、打ち出し角度が出ると、打球が高すぎる。ランが出ない。強い打球ではない。それより低い数字でボールを飛ばすように、スイングを修正します」。ちなみに、ミート率の目標値は1.50と教えてくれた。
JLPGAのスタッツ強化
このようにプレーする選手、そして観戦するファンにも重要となるスタッツですが、JLPGAでは2016年から強化し、2020年までに30項目に増やすように目標を設定。2019年には達成しています。
ですから、上記のようにデータを見て、参考とし、楽しむこともできるようになりました。
「17年以前、シーズンを通してデータをとっていたのは平均ストローク、パーオン率、平均パット数など7項目。その内、ドライビングディスタンスはシーズン1回でした。選手の長所、努力が必要な所を数字で可視化することは重要なツアー強化の一つです。なので、17年から毎試合、予選から決勝まで毎日、出場選手のスタッツデータを実測して、より細分化した数字で、データ精度を高めていきました。選手は、スタッツ項目と数字を照らし合わせることで、各自の能力向上へ役に立てていると強く感じます」。
今後の計画として以下が検討されています。
今後の協会の展望として、追加したいと考えているのは、ストローク・ゲインドの項目。米PGAツアーでは選手の能力を評価する重要指標。コロンビア大学ビジネススクールのマーク・プローディ教授が考案した。算出するためには全選手・全ストロークの距離、ライの情報取得が必要だ。ハードルが非常に高く現状は見込みこそ立ってはいないものの、実現すれば、距離別パーオン率、アプローチの距離別リカバリー率なども追加可能になる。
PGAツアーの中継を見ていれば分かる通り、ストローク・ゲインドの項目は欲しい。これが出ると、視聴していても、より直感的に、この選手はどのプレーを長所にツアーを戦っているかが一目瞭然となります。
導入されれば、今まで感覚で、「あの選手はパッティングが上手い」とか「ショットメーカーだ」と言っていたものが、可視化される良い取り組みであり、大いに期待したいと思います。
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