2020年、世界は「コロナウイルス」というかつてない恐怖と戦うことになりました。
世界中のゴルフツアーにおいても、その影響は多大で、戦争時でもなかったほどの、歴史上かつてない困難に直面しています。
その現状と未来について、書いていきたいと思います。
混乱の2020シーズン幕開け
2020年のツアーは、男女とも米ツアーが日本国内に先駆けて始まりました。
しかし、コロナウイルスの影響により、米ツアー女子LPGAは、2月のオーストラリア2連戦を最後に中止や延期。
男子PGAツアーでも、相当の混乱がありました。
第5のメジャーと言われる、プレイヤーズ選手権。
初日は通常通り開催されたものの、2日目以降は、急転直下の展開となりました。
当初の発表では、2日目以降は無観客で試合続行というものでしたが、急きょキャンセル。
それだけ、コロナウイルスの影響は、急速かつ強大だったのです。
あの、マスターズでさえ、早々に延期がきまりました。
イタリア等の影響が大きいヨーロピアンツアーは6月末までの試合がキャンセルとなっています。
日本国内ツアーも影響は避けられず
こういった現状にかんがみ、国内ゴルフツアーにも大きな影響が出ました。
ここでは、国内女子ツアーについてフォーカスし書いていきますが、まず、開幕戦のダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントが中止。
そもそも開幕戦は、当初から無観客試合での開催と発表されていました。
しかし、コロナウイルスの影響は刻々と、脅威、真実味を帯びてきます。
結果的に、開幕戦である、ダイキンオーキッドは中止となりました。
それ以降も、中止が続きました。
コロナ禍を受けての国内外女子ツアー
アメリカでは、いち早く3月の試合から中止や延期を決定。
メジャーである、ANAインスピレーションの延期も早々に、決定、発表されました。
これは、後述しますが、LPGAツアーが主催者であるため、中止や延期の決定が早くできるという背景があります。
そして、5月現在、LPGAツアーは7月下旬再開に向けて動き出しています。
一方、国内女子JLPGAツアーでは、開幕から中止が続いています。
本来であれば、アメリカのように中期的な予定を出したいところだと思います。
それができないのは、アメリカと違って、日本の場合、各試合は、ツアーであるJLPGAが主催ではなく、企業や放送局が主催している要因が強いためです。
しかし、この基本となる部分を理解している方は、非常に少ないのというのが現状です。
いずれにしても、JLPGAが試合の主催者でないという現状である限り、各個別の試合について、主催者と個々に協議をしながら開催の可否を決定していくということにならざるを得ないのが現実です。
ツアー開催の見通しが立たなかった背景
3月下旬には、コロナウイルス感染拡大を防ぐため、東京都が不要不急の外出を自粛する緊急の要請を出しました。
※4月7日には政府が緊急事態宣言を発出し5月25日付で全国が解除となりました。
要するに、この間、社会、経済活動が、相当程度、停止に近い状態となりました。
直接の影響は、イベント関係やアミューズメント施設、映画館やカラオケ店など、休業を余儀なくされている業界であり、また運輸、旅行、観光業界も直接の打撃を受けました。
日本政府も緊急対策を余儀なくされており、4月末、急ぎ補正予算を成立させました。
つまり、来月、来週、明日からの生活に困る人も出てきているからです。
企業も出来る限り自宅でのリモートワークを奨励し、時差出勤の取り組みも実施されています。
政府から発出された緊急事態宣言は、当初5月末まで延長となり、5月25日に解除となりました。
緊急事態宣言 今月31日まで延長決定 対象は全国
新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」について、政府は、4日夕方開いた対策本部で、対象地域を全国としたまま、今月31日まで延長することを決定しました。https://t.co/ugy4SwzMnJ pic.twitter.com/6wpxqZriXY— NHKニュース (@nhk_news) May 4, 2020
ただし、以前の社会に戻ることは難しく、「新しい生活様式」が求められています。
【速報 JUST IN 】緊急事態宣言 全国で解除 安倍首相が表明 #nhk_news https://t.co/5UguMhv2sd
— NHKニュース (@nhk_news) May 25, 2020
国内女子ツアー開幕の見通しは?
正直なところ、緊急事態宣言の解除までは、全く開幕の見通しが立っていませんでした。
社会的な背景でも書きましたが、そもそもゴルフをはじめとするスポーツイベントを含め、各種文化芸能のイベントのみならず、社会活動にまで広く、大きく影響は広がっているからです。大企業と言えども先行きは不安なのです。
アメリカの男女ツアーの状況を見る限り、また日本国内でも、非常事態宣言が出される状況ですので、この先、少なくとも緊急事態宣言解除までは、開催は無いと言わざるを得ません。
何と言っても、世界のメジャートーナメントでさえ、延期や中止を早々に決めたのですから。
国内女子ツアーで言えば、現時点では、開幕から連続中止とならざるを得なかったのですが、緊急事態宣言の解除により、やっと再開に向けて一筋の兆しが見えています。
JLPGAは、これに先立ち、5月26日に2つの発表を行いました。
【女子プロゴルフニュース】女子ゴルフ 今季と来季を1シーズンに統合 今季すでに18試合が中止に(デイリースポーツ) – Yahoo!ニュース / https://t.co/7xzCM8VN4k pic.twitter.com/yN9jqcHZpa
— 女子プロゴルフニュース速報 (@lpga_jp) May 25, 2020
開幕からシーズン半ばまで中止となった2020年、1シーズンとするのは難しい。
ですから、2020年と2021年シーズンを1つにするというものです。
【JLPGAツアー 20-21シーズンの開催方式変更について】がこちら。
【JLPGAステップ・アップ・ツアー 20-21シーズンの開催方式変更について】がこちら。
選手やキャディはどうなっているのか?
試合がなければ、あらゆるものが予定通りといかなくなってきます。
いつ試合が開催されるのかわからないのですから、練習や準備はしておかなければならない。
一方で試合が無いので、獲得賞金も無いのが現実です。
所属契約やスポンサー契約がある選手は、まだ救いがあるのかもしれません。
一方で、こういった援助がない選手は、出費だけかさむのが現実。
そして、プロキャディにとっては、全く収入が無い、そして彼らのほとんどは個人事業主なので、生活にも困っているのではと、懸念しています。
先行した、PGAツアーの取り組み
こんな現状ですが、PGAツアーは大きな決断をしました。
中断のPGAツアーが選手やキャディに金銭支援です。
こういった取り組みができることは素晴らしいし、対応も早いです。
しかしそれが出来るのには背景といったものがあります。
PGAツアーの財政基盤
ツアーの財政基盤の元となる金額などは、契約上、明らかにされていません。
しかし、今回の取り組みができるように、財政基盤は確固たるものがあります。
例えば、選手が引退したあとには年金制度があります。
この金額というのも、市民感覚、また他のスポーツ選手からしても破格です。
タイガー・ウッズを例にとれば、年金額は、200億円から300億円と言われています。
60歳から受け取ると仮定しても、毎年5億円以上です。
また、丸山茂樹選手は、2000年~2011年にPGAツアーでプレーしました。
彼も、PGAツアーメンバーとして、年金受給の有資格者です。
金額も公表はされていませんが、約20億円の年金と推定されています。
隆盛期を迎えている国内女子ツアー
男子ツアーは目も当てられない状況なので、今回は省きます。
こと国内女子ツアーに限ってはどうでしょう。
2018年から2019年は、黄金世代と言われる1998年度生まれの選手たちの活躍により、隆盛と人気の時期を迎えました。
あの藍ちゃんフィーバー以来と言って良いと思います。
シード選手50人中、11人が、この1998年度生まれの選手。
この中で、歴史的な偉業を達成した選手が出ました。それが渋野日向子選手で、ツアールーキーながら、初の海外試合となった、AIG全英女子オープンで、日本人42年ぶりの優勝。
Hinako Shibuno wins the AIG Women's British Open 2019!! #AIGWBO pic.twitter.com/pwdLWdPoqV
— AIG Women’s British Open (@AIGWBO) August 4, 2019
日本国中に「シブコフィーバー」が巻き起こったことは、記憶に新しい限りです。
また、本来であれば鳴り物入りでプロ入りした、プラチナ世代、ミレニアム世代と言われる、2000年度生まれのプロの活躍が期待されるところです。
国内女子ツアーの近未来
今回の新型コロナウイルスの問題について、PGAツアーの取り組みは、大変素晴らしいものと思います。
しかし、それも、財政基盤があってのことで、これは、年金制度にも関係します。
では、財政基盤の元、つまり、最大の収入源は何かといえば、放映権料だと考えています。
PGAツアーでは、この金額こそ契約上明らかになっていませんが、タイガー・ウッズの年金例でもわかる通りに、莫大であることは間違いありません。
少なくとも、小さい国の国家予算は余裕で超えるでしょう。
このように財政基盤がまず確保されていることが、ツアーの繁栄を導きます。
JLPGAも2018年、この放映権をめぐって主催者と協議をしました。
現状については、主催者(企業や放送局)とJLPGAの認識には差があり、未だ継続審議といった状況です。
まずは、放映権と主催をツアーに移し、財政基盤を安定させることが大切だと思っています。
それが達成できたあかつきには、PGAツアーと同様に、いわゆる選手あがりではない、ビジネス界における経営のプロが運営をつかさどっていくことが、将来的には必要だと思います。
小林浩美会長が新型コロナに言及
2020年3月30日にJLPGA、小林浩美会長が新型コロナウイルスの影響について言及しました。
この日には、4月第1週開催予定の、スタジオアリス女子オープン中止が発表されました。
また、国内ツアーは7月のニッポンハムレディスまで中止が決定し、当初予定されていたリランキングも今季は実施しないことが決定しています。
ただし、その間で、唯一、6月下旬開催予定のアース・モンダミンカップについては中止が決定されていません。
状況は刻々と変化するため、難しい判断を迫られる状況が続きそうでした。
ツアー再開に向けた動き
5月20日、1都1道3県を除き、緊急事態宣言が解除されるのに先立ち、ゴルフ界では大きな動きがありました。
それは、「日本国内プロゴルフトーナメントにおける新型コロナウイルス感染症対策について」という提言を、ゴルフ関連5団体新型コロナウイルス対策会議が表明したからです。
5団体とは、JGA・PGA・JLPGA・JGTO・GTPAです。
開催可否基準、感染予防策を明文化 ゴルフ5団体が大会運営の指針を作成 https://t.co/tbN5Gb11wu
— GDOニュース (@GDO_news) May 20, 2020
ここで、プロゴルフトーナメント運営の指針が決定され、連名で、「日本国内プロゴルフトーナメントにおける新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」を作成したのです。こちら。
これは、アフターコロナ、ウィズコロナの世界において、どのようにすれば、プロゴルフツアーが開催できるかについて、検討したものです。
5団体は、運営会社とも協議をし、感染症専門医である東邦大学炭山嘉伸理事長監修の元ガイドラインを策定したものです。
一足先に韓国女子ツアーはKLPGA選手権からツアーを再開。
その感染対策は、非常に考えられ、実行されたものでした。
ハイタッチは封印 イ・ボミ「とても気をつけて行動した」 #イ・ボミ
https://t.co/9R66Al5pyS— GDOニュース (@GDO_news) May 16, 2020
政府方針と折り合いをつけながら、どのように再開するのか、道しるべができたように思えます。
ついに2020年の開幕が決定!
そして、ついに2020年の開幕が決定しました。
アース・モンダミンカップで再開です。
大会日程は、6月25日から28日の4日間。
会場は、恒例の、カメリアヒルズカントリークラブ。
大会の賞金総額は2億4千万円、144名参加のビッグトーナメントです。
ある意味、再開には、最もふさわしいと思います。
しかし、再開と言っても、コロナウイルス対策は必至。
既に発表されたガイドラインにのっとった内容になります。
無観客試合での決定、関係者も極力少なくです。
例えば、通常の試合であれば会場入りできる、家族やコーチ、マネージャーなども立ち入りは出来ないほか、メディアも入ることができないという異例の対応となります。
それでも、この大会は、4日間ともインターネットにて配信されます。
大会公式HPはこちらです。
コロナ禍に襲われたゴルフツアーのまとめ
現時点では、コロナ禍の影響も残り、日本でも「新しい生活様式」が求められています。。
一方で、スポーツや文化、芸術、エンターテイメント、こういったものが普通に楽しめる状況になってほしい、特に国内女子ゴルフが世界に誇れるレベルと規模になることも願っています。
社会全体も、再出発に向けた動き出してきました。
ただし、厳密に言えば、「コロナ以前の世界」には戻れない。
一方で、新しい形のコミュニケーションやエンタータエイメントが生まれつつあります。
ゴルフに限って言えば、ツアーが再開し、現地やメディアを通じて、ファンに勇気と感動を与えられるようなときを、一刻も早く望みます。
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