今やゴルフを知らない人でもその名前を知ることになった、渋野日向子さん。スーパースターには間違いないのですが、その魅力は実力と同時に人間性、そして勝ちっぷりにあります。歓喜と共に走り抜けた2019年シーズンを振り返り、その魅力に迫ります。
渋野日向子 QT40位からの出発
2019年シーズンの始まり、渋野日向子さんはQT40位という資格で参戦をしました。
その前年に2回目のプロテスト合格を経て、ステップアップツアーに参戦。
躍動感のあるスイングには見るべきところがありましたが、優勝は無し。
QTでそこそこの順位を獲得した、普通の選手だったのです。
アマチュア時代、岡山作陽高校のゴルフ部では、団体で全国優勝。
しかし、必ずしもエースではない2年生でした。
QT40位では開幕戦の出場権は無し。
ファンや関係者の間で、少し話題になったのが、KKT杯バンテリンレディス。
初日81を叩いてからの2日目に66。
驚異的な爆発で予選を通過し、最終的には20位フィニッシュでした。
渋野日向子 初優勝はメジャーで
そして、最初の歓喜が訪れたのが、メジャー、サロンパスカップ。
全国的には無名だった選手が、リーダーボードを駆け上がり、見事な優勝争いを魅せます。
3日目、最終日とも同伴競技者は同じ。
ペソンウと、当時アマチュアで前年の日本女子アマ覇者の吉田優利。
優勝争いの経験もない20歳の選手は、けれんみの無いプレーで走り切ります。
3日目のプレーあたりから、そのプレースタイルはギャラリーを惹きつけました。
困難な状況でも笑顔でプレーを続け、声援を大きな力に変える。
白熱の勝負の結果は、優勝。
メジャーでの初優勝はもちろん、その笑顔と勝ちっぷりで、一気にファンは増えたと思います。
印象的だったのは、そのインタビューですね。
大会最年少優勝、史上13人目のLPGAツアー初優勝を公式戦で達成。
「やっぱり、笑顔じゃないでしょうか。公式戦で日本人選手が優勝したのも久しぶりなんですね。だけど、私で、本当によかったのでしょうか」
まさに、ヒロイン誕生ですが、これは物語の序章に過ぎませんでした。
渋野日向子 プレーオフで資生堂アネッサを勝つ
2勝目も劇的な勝利でした。初優勝から2ケ月後の資生堂アネッサレディス。
最終日、首位に立つ実力者、イミニョンを難しいホールのバーディーでとらえプレーオフへ。
雨中の決戦を制し、その力がタダモノでは無いことを印象付ける優勝でした。
「3週前、コーチからプレースタイルがよくない、と怒られました。笑顔を忘れていたのです。初優勝してから、ずっと調子がよくなかった。スコアが悪くても笑っていることが、だんだんつらくなったから。でも、コーチから注意をうけ、忘れてはいけないな-と反省したわけです。きょうも、ボギーを打って、ズーンとなったけど、しっかりと気持ちを切り替え、笑顔を取り戻すことができました」。
やっぱり、しぶこには笑顔が似合う。
そして、この笑顔が、1か月後に世界を魅了するのです。
渋野日向子 42年ぶりメジャー制覇
そして、渋野日向子さんは、全英女子オープンに出場します。
初めての海外での試合。行くまで、コースはリンクスだと思い込んでいたしぶこさん。
目標は、「静かに行って、静かに予選を通って、静かに帰る」
それが、とんでもない結果になるとは、自身も、そしてファンも思っていなかったでしょう。
しぶこらしさは、その練習ラウンドから全開でした。
黙々とアプローチ練習を繰り返す。
取材に来た報道陣に、食べていた、味のりによっちゃんイカを差し出す。
そして、味のりを喰って、めっちゃ笑顔で写真撮影に応じる。
この自然体は国宝級でした。その国宝は世界の宝に変わります。
海外で初の試合、それもメジャー。全英女子オープンに優勝。
日本中が日曜日の深夜から月曜日の早朝まで歓喜した、42年振りの快挙でした。
この試合で語らなければならないことは2つあります。
1つは、最後の最後までファンと喜びを分かち合い笑顔で戦い抜いたこと。
プレー中にも関わらず、子供に声をかけられれば、笑顔でグローブを渡すし、写真撮影にも応じる。
とてもじゃないが、メジャー優勝を争うプロ選手のそれではありません。
これで一気に、スコットランドの、いや、世界中のファンを味方にしました。
2つ目は、インコースで爆発的なスコアを出し続けたこと。
難しいインコースで怒涛のバーディーラッシュ。
単独首位スタートの最終日も、前半、4パットのダブルボギーもありながらです。
加えて、しぶこは、日本女子オープンの出場経験もありません。
つまり、2サムで戦うこと自体でさえ、初めてだったのです。
ついに、「スマイリングシンデレラ」誕生の瞬間です。
Hinako Shibuno wins the AIG Women’s British Open 2019!! #AIGWBO pic.twitter.com/pwdLWdPoqV
— AIG Women’s Open (@AIGWomensOpen) August 4, 2019
凱旋の記者会見でも、花束贈呈のあと、テーブルのセッティングがある。
主役でありながら、普通にしぶこさんは、それを手伝ったのです。
何と言う、ふるまいでしょう。
本当に優勝もして、記者会見をしても、メジャーチャンピオンの奢りは一切ありませんでした。
熱狂の帰国、そして東海クラシックでの奇跡
メジャーチャンピオンをひと目見たいと、会場にはとてつもない観客が来るようになりました。
一挙手一投足に注目が集まる。決して、プレーには良い影響ではありません。
そして、国内戦復帰後の優勝は奇跡的なものでした。
9月の第50回デサントレディース東海クラシック。
渋野日向子、最終日は首位と8打差からのスタートでした。
その最終組の3人が、テレサ・ルー、イミニョン、申ジエ。
女子ゴルフを知る人であれば、この3人に8打差をつけられて逆転することはあり得ない訳です。
自分自身も、のんびりと打ちっ放しに出かけたくらいですから。それが、
こんなことがあるのでしょうか?
もちろん、勝負は時の運もあります。
それにしても、今までの常識を覆す力を見せつけてくれました。
勝てと言われて勝った、エリエールレディス
2019シーズンの締めくくり優勝は、エリエールレディス。
この試合、しぶこさんは、青木翔コーチから、「勝て」と言われていました。
理由は、このシーズン、メインだった定由キャディとの優勝が無かったからです。
チームシブコを掲げている、しぶこさん。ここで勝たなきゃならない。
そうは言っても、簡単に勝てるほど、プロのツアーは甘くありません。
しかし、ここで勝ち切ってしまうのが、渋野日向子という選手なのです。
最終日は大接戦。首位と2打差からの逆転優勝。
定由キャディとの優勝は初めて。
プレーオフに備えて、パッティング練習をしていたしぶこさん。
優勝決定を定由キャディから聞いて、涙です。
笑顔がトレードマークだった彼女が、優勝して泣いたのは初めて。
それだけ、「チームで戦っている」という自負があったのです。
2019年の締めくくりと困難な道への挑戦
2019年の最終戦はリコーカップ。
賞金女王の可能性があったしぶこさんには、メディアがつきっきり。
これは宿命とは言え、対応するのは、正直面倒なこと、この上ありません。
一躍スターダムにのし上がった渋野日向子さんは、最終戦を2位で終えます。
賞金女王には届きませんでしたが、メルセデスランキングは1位。
何と言っても、全英女子オープン優勝は、賞金金額で7,000万円以上。
ランキングポイントでも最も高い試合でしたので、当然の結果です。
最終戦の優勝は、ペソンウさん。
奇しくも、初優勝をマッチレースで争ったサロンパスカップを戦った選手でした。
そして、全く海外志向の無かった渋野日向子さんは、大きな決断をします。
それは、11月までにツアーメンバーへの申請をすれば参戦が可能だった米女子LPGAツアー。
一旦はその権利を放棄したのですが、それ以降で世界を目指す決心を固めた。
そして、世界への挑戦を目指し、大胆なスイング改造に取り組むこととなります。
渋野日向子 関連リンク
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